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フェルマーの最終定理
サイモン・シン 青木薫 訳 新潮文庫 x2+y2=z2 突然ですが、ピタゴラスの定理。覚えてますか? あ、帰らないで帰らないで(笑) これは直角三角形、いわゆる三平方の定理ですね。 建築をちょびっとかじったことのある私には、「さしご」と言われたほうが馴染みがある。 でね。 xn+yn=zn nが2より大きい場合には整数解をもたない。 これがフェルマーの最終定理。 数学界においての最大の謎と呼ばれてきた理由は、このフェルマーというおっさん、上の最終定理をある数論の本の余白に書いておきながら、「余白が足りないから証明できないや、わはは~」(注:よっしぃ意訳)と書き残して亡くなったんだって。 なんちゅう迷惑なおっさんだ(笑) それから300余年もの間、過去の偉大な数学者たちを苦しめ続け、結局謎は謎のままだったフェルマーの最終定理に、この本の主人公であるアンドリュー・ワイルズという数学者が挑む、というドキュメンタリー本です。 なにがいいって、著者が数学関係者じゃないのがいい(物理学の博士号を持ってるテレビ人だけど)。数学の知識なんてまったく必要とせずに読めるんだもん。訳者の青木さん(こちらは理学博士)の訳が上手なんでしょうね。とっても読みやすい。 数学を文章にするとこうなるのか、と。 さて、主人公のアンドリューさん。なんと10歳のときにフェルマーの最終定理に出会い、これまでの300余年、どんなに偉大な数学者にもこの定理が証明できていない、ということを知って、「よーし、自分がやってやる!」と思ったんだそうです。とんでもない フェルマーだけでなく、ピタゴラスはもちろんのことユークリッドやオイラーといった、歴代の偉大なる数学者のエピソードがふんだんに盛り込まれています。その中には、時代の流れに翻弄されて悲惨な運命をたどった数学者もいたり、日本人もいたり(アンドリューさんがフェルマーの最終定理を証明するにあたって、重要な役割を果たしている)と、いろんな角度から数学が見えてきてとても面白い。 外国版「いつみても波乱万丈」といったところでしょうか。 こういう本に出会うと、「あー、もっと勉強しておけばよかったなー」と定石どおりの感想を持ったりするんだけど、じゃあ若い頃にこれを読んで興味を持てるかと言われたら、答えはNOだと思う。 数学者はよく、数式や証明に対して「美しい」という言葉を使います。 私にはこの感覚、残念だけどよくわからない。 数学って、感覚とかセンスが必要だと思うの。私にはそれがない。 証明されているものを見ると、「ああ、なるほどね」とは思うけど、その過程は屁理屈にしか思えないんだもん(笑)自分で証明しようとは思わない(できない)。 たとえば上のピタゴラスの定理。 x、y、zに果てしなく数字を入れていって、コンピュータに計算させて、答えが合ってりゃハイOK!…とは行かないのが数学。たとえばコンピュータが5,000,000,000まで計算したとして全部合っていたとする。じゃあ大丈夫でしょ、と思ったら大間違い。じゃあ、5,000,000,001はどうなの?そのあとは?全部合ってるとは言えないでしょ?それを「証明」という美しい回答であらわしましょうよ…なんて、私には無理。 ただ、数字に対するその情熱、ちょっとうらやましくもあるかな。 難しいことは全然わからないけれど、こういった過程や人物が実に生き生きと描かれていて、小説としての読み応えもアリ。数学好きな人には、巻末に文中の答えとして「補遺」が付けられているので、そちらも十分楽しめると思いますよ。 今のところ、今年度ナンバーワン候補作品です。
by non_c_e_male
| 2007-08-09 23:36
| こころにのこるもの
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